「成長期」には何が起こるのか
Web制作は「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のプロダクトライフサイクルに照らすと、現在は「成長期」だろう。
「成長期」には何が起こるのか。
需要が増える。生産量が増える。産業全体の売上が上がる。競争が激しくなるから投資は必要。ひとつ単位の価格は下がるか。
生産は効率化されていく。家内制手工業のような「ひとり、または小さな単位で全部やる」形態が減り、「複数人が役割を完全に分担して作業する」形態になっていく。
分業された分野にはマニュアルやガイドラインが整備されるのでハードルは低くなり参入者が増える。
分業が進む? Web制作においてもそうだろうか?
結論からいうと、「分業はできる、だが完全分業ではよい仕事ができない」と思っている。
「完全分業」に否定的な理由
完全分業とは、複数人が役割を完全に分担して作業し、他領域については完全に他の人に任せること。
つまりクライアントとの交渉は営業またはディレクタで、ディレクタが各要員と打ち合わせながら指示を出し作業を行うような形。各要員が話をするのはディレクタか隣の職域の人のみであり、飛び越えることはない。
今現在の制作者は、たいてい、導入期のカオスの中で既にいろんな分野を経ているのでよいかもしれない。だが今後入ってくる人達はどうだろう。ビジュアルデザインをやりたい人はビジュアルデザインのみを、ディレクターになりたい人はディレクションのみを学ぶのだろうか?
わたしがなぜ「完全分業」に否定的かといえば、理由はふたつある。
1つ目は、「Web制作ではひとつの職域があまりに深く他と関わっているから」だ。
ひとりが他分野に関する知識や経験を持ってこそ自分野で力を発揮できる。具体的には、デザインの知識のない人がレイアウトを伴うワイヤフレームを書けるのかという疑問が生まれたりするわけです。
2つ目は、「分業は大量生産向きであり、Webは大量生産に向いていないから」。
逆に言うと、大量生産されるタイプのWebサイトなら分業のほうが良いと思う。
ちなみに大量生産的な産業においても、生産物の精度と効率をあげるために完全分業をみなおしたりしている(確か車産業だったと思うがうろ覚え)。
ではどんな体制がいいのか
「自分野に対してスペシャリストであり、かつ、他分野も知識・経験のある人」が揃ったチームでの分業が最強なのは言うまでもなく。それでなければ、「分業しすぎず他分野のことも聞けたり口を出せたり手を出せたりする流動性のある小さな体制」がいいのではないかなと。
極論ではひとりで全部つくってもいいと思う。ユーザーのフィードバックでより良くしていけるのがWebだから。ひとりだと、コミュニケーションのリスクやコストが減るので、スピーディに改善していける。
ごく個人的な感想として「分業するより、いろいろやれたり知れたほうが楽しい」という気持ちもある。楽しいほうがいい仕事ができる。
そんなことについて聞かれることが多い今日この頃なので、書きながら気持ちをまとめてみた次第。