お客さまのいる場所に、自ら入っていく

とあるWebサイトの企画を考え中で、案のひとつとして、ソーシャルメディアの活用がある。今Webにおける戦略を練る上で、ある意味、必須とも言える方向性なのだが、ひとくちに「ソーシャルメディアの活用」と言ってもえらく幅が広い。言葉だけがひとり歩きしている感もある。

ソーシャルメディアの活用について考えてみる

まず、「ソーシャルメディア」の幅が広い。
何かと話題のTwitterや、日本で一番有名なmixi、携帯層に人気のGREE、はてブやdeliciousなどのSBM、ソーシャルニュース、それからブログやWiki、フォーラム、掲示板、ユーザの声が反映されているという意味でAmazonや楽天などのECサイト、口コミの活発な価格.comなど比較サイトも、ソーシャルメディアなのだ。

というわけで「ソーシャルメディアの活用」とは、Web上でお客さまとコミュニケーションすることにより、何らかの目的を達成しようとすることと言える。
ざっくりしすぎている。
活用方法は「目的」から考えることもできれば、「できる範囲」から考えることもできる。目的が先というのが大方の意見だと思われるが、あまりそこに囚われると、その前提として必要な自社サイトや情報公開、その体制の整備が中途半端になったまま、突っ走りたくなるから困る。
まずは自社のWebサイトをきっちり作る。その上での情報を必要な場所で公開する。その必要な場所というのに、ソーシャルメディアが含まれるはずだ。そしてそこでお客さまとのコミュニケーションを開始するのだ。それが「ソーシャルメディアの活用」の一歩だ。

具体的にはどうする?

個人的に、企業がまずできることとしては、ブログだと思う。
自社の、社長の、スタッフの、プロダクトの、ブログだ。そこでたくさんの情報公開と、お客さまとコミュニケーションを行う。
どうしてこれが最初なのかと言えば、そこは自分の土地であり、管理がしやすいからである。公開する記事を十分にチェックすることができるし、コミュニケーションもゆるやかであることが多いし、どちらかと言えばその企業を好きな方が見てくれる。

ブログの次が問題だ。ここにひとつの壁がある。
お客さまが好き勝手に、ああだこうだ言っているところに、ぬっと顔を出す。これは勇気がいる。いろんな人がそこにはいる。しかも人々は顔が見えないWeb上ではけっこう厳しい言葉を吐いたりするものだ。
ひるみそうである。

しかし、お客さまのいる場所へ行って、何を考えているのか知りたい、わからないことがあればサポートしたい、悪いところがあれば変える用意はある、良いところはもっと伸ばしたい……、そう思うならばやるしかない。
企業は、自社サイトでドーンと構えているのではなく、お客さまのいる場所に、自ら入っていくのだ。

ソーシャルメディア担当は誰がやるのか

「あなたが今日から担当です」と言われて、いきなりやれるものではない。
まずは使う。
ソーシャルメディアの窓口となる人は、それを三ヶ月以上触った人であることが望ましいと言われている。自分でソーシャルメディアに触れ、どっぷり浸かり、使われている言葉を知り、空気に慣れる必要がある。
コミュニケーションの距離感は、中で過ごした人にしかわからないものだ。

とは言え、人よりインターネットやコンピュータが好きなタイプの人にできる仕事かというと、もちろん違うわけです。

私の尊敬するコンサルタントであるDeborah Schultzさんが講演で来日した際、わたしは質問した。
企業のソーシャルメディアの担当者はどのような人材が適しているのか。
難しい問題で、正解はないが、ひとつは「技術やWebに詳しい人ではなく、お客さまと日頃からコミュニケーションしている人」というのが回答であった。たとえば、カスタマーサポートの人。
Webにおいても、コミュニケーションは人と人で行われるのである。