「女性なのにすごいですね」と言われる

「女性なのに社長なんてすごいですね」

社長だった頃によく言われた言葉だ。

「女性なのにそんなに仕事してすごいですね」
「女性なのに良いデザインしてすごいですね」

たいていは男性が言うが、ときどき女性も言う。
たいていは中年以降の人が言うが、ときどき大学生も言う。
たぶん褒めているつもりなのだろうけど、世界はまだまだこんなものか、と、私はがっかりする。

働く女性向けのイベントや、女性を応援するなんとか、みたいな集まりが世の中にはたくさんある。私はそういうものがまた、「働く女性」を特別視させる一因になる気がしてしまって、参加したことがない。
でも集まりたくなる気持ちもわかる。いや、何もせずうだうだしている私より、集まって話したり学んだりしている人たちのほうが断然すばらしい。

「マイノリティだから集まるんだよ」と人が言った。
たとえば、女性エンジニアが少ないから集まる。育児とキャリアを両立してる女性が少ないから集まる。
性別だけじゃなくて、人種、年齢、地域なんかにも当てはまる。同じ属性の人たちが集まる。少数であるほど集まる。集まってただ楽しかったり、安心したりってこともあるけど、情報共有したり、マイノリティであるがゆえの不便を力を合わせて改善したりもする。

いつかマイノリティでなくなったときに、集まりは必要なくなるし、「女性なのにすごいですね」という言葉もなくなるんだろう。
私は普段、すでにそのような世界で生きているような気になってしまっているので、女性向けの集まりが苦手なのかもしれない。そしてまだそのような世界ではないことをときどき嫌でも思い知らされては、必要以上にがっかりしたり、腹が立ったりするのかもしれない。

でも、あとほんの少しな気がするのです。